少年時代を歩く
 

 休日の昼下がり、ふと、僕は思い立ち家を出た。
なぜか小学校までの道のりを散歩しようと思ったのだ。
それは別に格好つけていた訳でもないし、何かに浸りたいわけでもない。
ただ、なんとなく、そう、なんとなく散歩したいと思ったのだ。

 

 小さい頃歩いた通学路を歩く。家から小学校までは、この道を30分ほど歩く。
あの頃は道の途中にいろいろなチェック・ポイントがあった。
待ち時間が異常に長い3つの信号機「魔の信号トリオ」。
家と家の間の隙間のブロック塀を渡るショートカット。
怖い犬が庭先につながれている家。
ハンバーグ入りのおやきを売っている駄菓子屋。
嗚呼懐かしき少年時代・・

 

 だが、そんなチェックポイントは思い出の中だけの産物になっていた。
町並みはガラリと変わり、古い家屋は改築され、スーパーは
コンビニエンスストアになっていた。

 

 そんな中、小さい頃によく通った駄菓子屋はまだ存在していた。
僕は吸い寄せられるように店内に入る。
あの頃と全く同じ景色。
年がとっていないかのようなレジのおじいさん。
利益なんて得られないだろう1円5円のお菓子。
目まぐるしく変わる現代で、それらは全く変わっていなかった。
僕は何故か嬉しくなった。

 

 さらに、僕の青春のシンボルとも言える、懐かしいお菓子を見つけた。
酢だこさん太郎」。10円の駄菓子であり、魚のすり身を酢漬けしたものだ。
甘酸っぱい味覚に病みつきだった。
 

酢だこさん太郎を手に取る。
その瞬間、僕の頭に、懐かしい過去の思い出が蘇ってきた。

 

 

 

 


あれは小学校の冬休みが明けた始業式の日・・

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僕「皆おはよう〜」

友達「おうおはよ・・って何だお前すっげえ酸っぱい匂いするぞ!」

僕「あれ?そう?・・ああ、酢だこさん太郎食べたせいかな」

友達「んなキツイ匂いするかあ?」

僕「どうだろ?まあお年玉の殆どは酢だこさん太郎に変わったからね、毎日30枚くらい食べてたよ

友達「げ!」

他の人達「うわ!こいつ酸っぱいぞ。皆寄るなー」


「寄るなー」 「寄るなー」 「寄るなー」

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僕は酢だこさん太郎を棚にぶん投げるようにして戻した。

そして、帰ってクソしてネトゲして寝ようと思い、足早にその店を後にした。

 

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